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2026年01月07日

【AWS re:Invent 2025 参加レポート】新卒1年目が体験したAIエージェントの最前線

イベント
AWS re:Invent 2025 参加レポート
2025年12月、ラスベガスで開催された「AWS re:Invent 2025」に初めて参加してきました。
本レポートでは、新卒1年目の私が感じたre:Inventの熱気や、エンジニア単独参加というプレッシャーの中で行った準備、そして現地で体感した最新技術(特にAIエージェント)について、時系列に沿ってご紹介します。

AWS re:Invent とは

AWS re:Inventは、Amazon Web Services(AWS)が主催する世界最大級のクラウドコンピューティングカンファレンスです。毎年ラスベガスで開催され、世界中から数万人のエンジニアやビジネスリーダーが集結します。期間中は3,000を超える技術セッション、ワークショップ、基調講演が行われ、クラウドの最新技術トレンドや将来のビジョンがいち早く共有される場となっています。
  • re:Inventは単なる会議室での勉強会ではありません。ラスベガスの街全体が会場となり、複数のホテルが会場として使われます。会場間の移動だけで最大5kmも離れており、バスやモノレールで移動するという、日本では考えられない規模のイベントです。

    また、技術だけでなく参加者が楽しめる工夫が随所に凝らされているのも特徴です。会場には最新技術をテーマにしたアトラクションも設置されていました。

    The House Of Kiro:最新のAIエージェント「Kiro」をテーマにしたお化け屋敷風のアトラクションにて
  • 最新のAIエージェント「Kiro」をテーマにしたお化け屋敷風のアトラクションにて

参加の経緯と事前準備

re:Inventへの参加が決まったのは9月9日、営業副部長からのチャットでの打診がきっかけでした。会社としても初めての参加となる今回のメンバーは、営業部門の部長・副部長、そして私の3人。つまり、エンジニアとしての参加者は私一人という状況でした。

新卒1年目での海外出張、しかも普段の業務ではAWSに関わっていない状態からのスタートです。
「AWSのプロフェッショナルが集まる場所に、新卒の自分が一人で飛び込んで大丈夫なのか?」
「全編英語の技術セッションについていけるのか?」
といった、エンジニアとしての力量不足に対する不安とプレッシャーを強く感じていました。

そこで、渡航までの約3ヶ月間は、現地での学びを最大化するために以下の準備を行いました。

・英語のリスニング対策

AWS公式YouTubeチャンネルで公開されている過去のセッション動画視聴し、現地の英語スピードや専門性の高い英語プレゼンテーションに耳を慣らしました。

・資格取得とハンズオンによる基礎固め

AWSの知識を体系的に身につけるため、10月から勉強を開始しました。特に11月は休日も1日7時間学習時間を確保し、「Cloud Practitioner」「AI Practitioner」「Solution Architect Associate」の3つの資格を取得しました。 また、知識だけでなく実践感覚を養うため、AWS Skill Builderを活用して複数のサービスを実際に操作したり、簡単なWebサイトを作成したりするハンズオン学習にも力を入れました。

・セッション調査

部署の先輩と相談して「自社のツール・開発プロセス改善に関連すること」「最新技術の動向調査」を軸に受講セッションを調査しました。広大な会場間の移動時間も考慮し、事前にパズルのようにスケジュールを組み立てた上で予約開始に備えました。予約開始は日本時間の深夜2時。人気セッションはすぐに埋まってしまうため、当日は夜更かししてPCの前で待機し、計画通りにセッションを確保しました。

振り返ってみると、この3ヶ月間で英語の対策を行い、資格取得を通じてAWSサービスの知識を詰め込んでおいたことが、現地での体験において最大の武器になりました。この準備がなければ、現地のスピード感に圧倒されるだけで終わっていたかもしれません。

現地での体験と技術の浸透(Day 0)

イベント開始前日は時間に余裕があったため、最新の自動運転技術を体験することも兼ねて、レンタルしたテスラ車でグランドキャニオンへ向かいました。片道2時間ほどのドライブです。
Grand Canyon:現地の広大な風景
Grand Canyon:現地の広大な風景

私は普段あまりハンドルを握らない、いわゆるペーパードライバーです。
最初は不安もありましたが、一緒に行った営業副部長と交代しながら運転しました。テスラの高度な運転支援機能のおかげで、慣れないアメリカの広い道路でも問題なく走行することができました。

街中も含めて大部分を自動運転に任せることができましたが、一方で「急カーブでの減速が遅れてヒヤリとする」「逆光時に機能が停止する」「運転に慣れた人間と比べると制御が荒い」 といった課題も肌で感じました。技術の進歩に感銘を受ける一方で、完全な自律走行にはまだ解決すべき壁があることを体感しました。
Las Vegas Night View:車窓から見るラスベガスの街並み
Las Vegas Night View:車窓から見るラスベガスの街並み

Keynote:AIエージェントへのシフト

カンファレンス2日目、AWSのCEO Matt Garman氏によるKeynote(基調講演)に参加しました。
会場は開始前からDJによるパフォーマンスが行われており、広大なホールが満員になる熱気に圧倒されました。
Keynote Opening:講演開始前の会場の様子
Keynote Opening:講演開始前の会場の様子

今回の主要テーマは「AIエージェント」でした。Matt Garman氏は "Agents are the new cloud" と宣言し、技術トレンドの主役が「人間の作業を支援するCopilot」から「自律的にタスクを完遂するAgent」へ変化したことを強調しました。

2時間に及ぶ講演のほとんどがAIエージェントに関する話題で占められており、AI用のチップやサーバーといったインフラストラクチャから、最新の基盤モデル、そして実際に稼働するエージェントに至るまで、AWSがこの分野に注力している姿勢が鮮明に打ち出されていました。特に、複雑な開発タスクを自律的に遂行するエージェント 「Kiro Autonomous Agent」 の発表は、会場から大きな注目を集めていました。
Keynote Slide:自律型エージェント「Kiro Autonomous Agent」の発表
Keynote Slide:自律型エージェント「Kiro Autonomous Agent」の発表

GameDayでの実践とチーム開発

「GameDay」は、ゲーム形式のセッションで、与えられた架空のシナリオに基づき、AWSサービスを使ってトラブルシューティングやシステム構築を競い合う実践形式のイベントです。

これはre:Inventならではの貴重な体験ができるセッションですが、即席のチームを組んで英語での議論が必要となるため、参加へのハードルは決して低くありません。しかし、「せっかくre:Inventに参加するのだから」と意を決して挑戦することにしました。私は異なるテーマの2つのセッションに参加しました。

Generative AI Architecture Rodeo

このセッションは、PCを使わず、模造紙にアーキテクチャ図を描き起こすというユニークな形式でした。
セッション名にある「Rodeo」にあやかり、スタッフはカウボーイのようなロデオの衣装を身にまとい、参加者も配布されたスカーフや帽子を着用して参加します。会場は楽しげなお祭りムードでしたが、議論そのものは非常に真剣で熱いものでした。

7名のチームで臨みましたが、私以外の6名は米国在住のエンジニアでした。議論のスピードが速く、英語での即座な意見出しに苦戦し、ファイルフォーマットの統一に関する議論などでは十分に主張できず悔しい思いをしました。

しかし、事前勉強を通じてアーキテクチャの構築方法を頭に入れていたおかげで、議論の流れを理解し、Amazon Textractによる文書抽出や、SQSとLambdaを用いた並列処理構成などを提案することができました。自分の提案の一部がチームの設計図に採用され、少しでも貢献できたときは、安堵と共に込み上げてくる嬉しさがありました。「日本で準備しておいて本当に良かった」と心から感じた瞬間です。
Our Architecture:チームで作成したアーキテクチャ図
Our Architecture:チームで作成したアーキテクチャ図

AI-Assisted Developer Experience ft. New Relic

こちらはPCを使用し、架空の企業「Unicorn.Rentals」の新入エンジニアとして、AI支援ツールを用いてレガシーなシステムを刷新するというシナリオでした。

こちらは日本人4人の即席チームで参加しましたが、若手メンバーが多く、私を含めAWSの操作にそこまで慣れていないメンバーが多い構成でした。基本的にはPCに向かって個人でタスクを進めるスタイルでしたが、分からない点や詰まったポイントがあれば互いに声を掛け合い、協力して解決策を探りながら進めました。

Amazon Q Developer や Kiro CLI を駆使して、JavaアプリケーションのバージョンアップやAWS設定ミスの修正といった課題に取り組みました。その中で、未知のエラーに遭遇しても迅速に解決でき、開発スピードが格段に向上することを実感しました。
GameDay Venue:GameDay会場の全景
GameDay Venue:GameDay会場の全景

AIによる開発プロセスの変革

GameDayに加え、計7つのワークショップに参加しました。ワークショップは、最初に講師から10〜20分程度の概要説明があり、その後は提供された手順書に従って各自のペースで課題に取り組む形式で進みます。

ここでは、今年のテーマである「AIエージェント」が開発プロセスにどのような影響を与えるかを実体験しました。特に印象に残ったのは以下の技術です。

仕様書駆動開発 (Spec-Driven Development)

Kiro CLIを用いたワークショップでは、「なんとなくの指示」ではなく、製品要件などの仕様書を定義し、それをAIに守らせる手法を学びました。

仕様書を定義するだけで終わらず、AWSサービスの権限管理からコード生成・テスト実行までのプロセスをAIが自律的に実行できる点を体験しました。これにより、大規模開発でも仕様と実装の乖離を防ぎながら、開発プロセスの多くを自動化できる可能性を強く感じました。

ガードレール (Guardrails) による品質担保

AIエージェントの実用化における最大の課題は「ハルシネーション」です。Amazon Bedrock Guardrailsのワークショップでは、「自動推論 (Automated Reasoning)」 という技術を用いてこれを防ぐ手法を学びました。

これは、AIの出力を定義されたポリシー(論理式などのルール)と照らし合わせて数学的に検証する仕組みです。これにより、「論理的に矛盾していないか」を厳密にチェックし、最大99%という高い信頼性を担保できることを体験しました。

今後の展望

今回の参加を通じ、世界のエンジニアと比較して知識や経験が不足していることを痛感しましたが、同時に自身の課題が明確になりました。
帰国後は、今回得た知見を組織に還元するため、以下の具体的な活動を推進していきます。

1. AWS Kiroによる仕様書駆動開発の試行

現在担当しているツール開発の一部機能において、Kiroを用いた開発を試験的に導入します。仕様駆動開発を導入することで、開発プロセス全体のコストをどれだけ削減できるかを評価する予定です。

2. 社内勉強会での知識共有

開発部の定例会にて、Kiroによる仕様書駆動開発の体験会を実施します。「チャットボット」の枠を超えた、自律型エージェントによるプロセス変革の可能性をチーム全体に広めていきたいと考えています。
SWAG:今回の参加で入手した公式ノベルティグッズ
SWAG:今回の参加で入手した公式ノベルティグッズ
新卒1年目でこのような機会をいただいたことに感謝し、得られた知見を今後の業務に還元していきます。
現地ラスベガスで感じた世界中のエンジニアの熱量を糧に、これからも挑戦を続けていきます!

筆者紹介

新卒AIエンジニア

ガイオ・テクノロジー株式会社

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