GAIO CLUB

2005年04月02日

自動車ECUアプリ開発・ソフト品質向上のためにフリースケールセミコンダクタ社&ガイオの開発提案

GAIO CLUB 特集
GAIO CLUB【2005/4月号】
自動車ECUアプリ開発・ソフト品質向上のために
フリースケール・セミコンダクタ社&ガイオの開発提案
~ 高性能プロセッサと搭載されるECU大規模ソフトの検証 ~


本特集では、フリースケール・セミコンダクタ社より協力を頂き、自動車アプリケーション開発の現状と、ECUに搭載される大規模アプリケーションの開発・検証手法について解説します。

電子制御化の進む自動車

現在の自動車は、構成要素のほとんどは電子制御化されており、車体内部に50個を超えるマイコンが搭載される車種もあります。自動車の開発では、その分野を、パワートレイン系(動力伝達)、ボディー系(車体)、セーフティシャーシ系(安全走行)、テレマティクス系(情報)に分けて開発されていますが、そのどれにもECU(電子制御ユニット)が搭載されています。

環境に優しいエンジン

今、自動車業界は新たな環境対策の課題に直面しています。これからの自動車には、性能や快適さに加え、今まで以上に環境を配慮したエンジン開発、自動車開発が求められています。

例えば、米国カリフォルニア州大気自然局(CARB)が定めた2008年排ガス規制や、欧州の排ガス規制などの規制値をクリアするためには、より緻密なエンジン制御が必要とされています。

空気の状態やエンジンの回転数などを的確にモニタして、最適な添加タイミングと燃料噴射量を制御することで、効率よく動力性能を得ると共に、よりクリーンな排ガスを実現しなければ、厳しい環境基準値を満たすことが難しくなります。

ますます高性能化するプロセッサで環境基準をクリア

  • 自動車向けプロセッサの分野では、フリースケール社製MPC5xxファミリが業界で大きなシェアを持っています。このシリーズの新製品「MPC5554」の例では、32ビットPowerPC(R)コアに、2MBもの大容量フラッシュメモリ、タイミング制御に特化したもう1つのRISCプロセッサ(eTPU)を搭載しており、非常に高性能なプロセッサとなっています。例えば、内蔵の2MBのフラッシュメモリを活用すると、エンジン点火のタイミングと燃料噴射量を制御するための、より緻密なマップデータが搭載可能になます。
また、メインMPUとは独立したeTPU(enhanced Time Processing Unit)により、時間ベースやクランク角ベースのタイミング制御をユーザープログラムで行う場合でも、より緻密な制御ロジックの実装が可能になります。

さらに、MPUコアにはSIMD(並列演算アーキテクチャ)が採用されており、DSP演算の取り込みも可能になっています。これにより、エンジン点火のタイミングと燃料噴射量の制御をダイナミック演算方式に変えることも可能で、マップデータを搭載していたフラッシュメモリに、他のより高度な制御プログラムとデータを格納することも可能になります。

このように、環境基準をクリアして、排ガスをクリーンにするために、車載用プロセッサの高性能要求は、ますます加速しています。

大きな変革期を迎える自動車向けマイコン組み込み市場

自動車ECUに搭載されるマイコンは、大きな変革期を迎えています。現在、ケータイ、デジタル家電製品では、画像処理、MPEG動画、ネットワーク接続など、ソフトウエアによる機能実装が進んでいます。これらのソフトを効率よく開発するために、RTOSの採用、マイコンプラットフォームの統一など、開発手法の転換が図られてきました。

現在の自動車ECUにも、CAN、FlexRay、MOSTなど、車内ネットワークプロトコルが実装され始めており、カーナビなどの情報機器との統合化により、近い将来、デジタル家電向けのマイコンを圧倒する性能が要求されると言われています。

車載ソフトウエアV字型開発へのSIL-Sツールの提案

自動車ECUは、下図の様なV字型のプロセスで開発されています。特徴的なのは、コーディング、設計を終えた後から最終総合テストまでの間に、検証過程が多数設定されていることです。ソフトウエアモジュールの基礎検証として、関数モジュール単体テスト、パスカバレッジテストは、自動車ソフト開発の分野では、古くから行われています。

ECU動作の検証には、HIL-S(Hardware-in-the-loop Simulrator:ヒルズ)と呼ばれるハードウエアエミュレータが一般的に用いられています。しかしながら、HIL-Sのシステムは高価であることや、メーカ間のデータ互換性が低い等の課題もあるようです。

ガイオでは、マイコンシミュレータ(ISS)をコアに、より環境構築が柔軟で、運用コストを低く抑えることのできる、ソフトウエアのみの検証システム「SIL-S(Software-in-the-loop Simulator:シルズ)」を提案しています。

フリースケール社とガイオとの「実践的な」パートナーシップ

現在のECUソフトを取り巻く開発環境は、多岐にわたっており、上流での仕様決定のためのモデリングツール、クロスコンパイラやRTOSなどの組み込みに必要な開発ツール、動作検証のためのHIL-S、SIL-Sと言った各種シミュレータを、ユーザーが1つ1つ集めるのは効率的ではありません。

多くの半導体メーカーは、ガイオの様なツールベンダーを「サードパーティ」として、ソフト開発のソリューションの一部として取り込むプログラムを持ちますが、実際の活動は、ユーザーへの提案をツールベンダーに任せてしまう傾向にあります。ガイオも独自の活動で、ツール運用の提案を行っていますが、特にマイコンシミュレータのようなツール製品では、プロセッサの正確なモデル化が必要であり、半導体メーカーとの密接なつながりが、ツールの品質を高めることにもつながります。また、プロセッサの性能を活かす開発ツール提案へもつながると考えています。

このようなことから、今回、車載MPUに大きなシェアを持つMPC5xxシリーズを皮切りに、フリースケール社と、従来よりも強力で実践的なパートナーシップを結び、日常のツール開発、営業・提案活動を共にする体制を作っています。

V字開発の検証工程にソフトシミュレータを提案します

ガイオでは、V字開発のテスト工程に置いて、ソフト品質保証の原点である関数モジュール単体テストや、ECU単体または複数のECUの結合システムの動作検証のために、マイコンシミュレータ(ISS)を使用したソフトウエアシミュレータを展開しています。

SIL-Sの利点を活かして、各社独自仕様部分への柔軟な対応や、HIL-Sと比較してより低コストな運用が可能になります。また、各検証工程でのツールコアには、同一のマイコンエンジン(ISS)が使用されており、マイコンを取り巻く周辺デバイスの構成方法も同一であることから、各検証工程での検証用モジュールの共用化、データの流用などが、容易に行えます。また、上流でのMATLAB/Simulinkモデルとの接続を行うインタフェースも備えています。

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