GAIO CLUB

2006年06月01日

車両運動をリアルに再現するシミュレータ「CarSim」と連携 マイコンシミュレータ& MATLAB/Simulink を使用したSIL-S環境

GAIO CLUB 特集
GAIO CLUB【2006/6月号】
車両運動をリアルに再現するシミュレータ「CarSim」と連携ガイオマイコンシミュレータ&MATLAB/Simulinkを使用したSIL-S環境
~複雑化する自動車ECUソフト開発を効率化する先端シミュレーション技術について~


本特集では、米国Mechanical Simulation社の正規代理店であり、車両運動シミュレーション利用技術のコンサルティングを手がけるバーチャルメカニクス社(所在地:名古屋市)代表取締役の永瀬氏のご協力・監修を頂き、複雑化する自動車ECUの組込みソフトの検証手法として主流になりつつある、ECUソフト開発のシミュレーション環境について解説します。

車両運動シミュレーションソフトウエア「CarSim」

CarSimは、米国Mechanical Simulation社が開発した、車両運動シミュレーションパッケージソフトウエアです。乗用車や小型商用車の、さまざまな運転条件(アクセル、ブレーキ、ハンドル、シフト操作)と環境条件(摩擦係数や高さ変化のある道路コース、横風等)での動的な挙動を、パソコン上の簡単操作で、シミュレーション解析・評価することができます。
また、MATLAB/Simulinkとのインタフェースを取ることで、さまざまな車両制御システムの制御ロジックを、実車評価の前に、パソコン上で容易に検討/検証することができます。姉妹ソフトのTruckSim(中・大型トラックやバス向け)や、BikeSim(自動二輪車向け)も同様のシミュレーションを行うことができます。

簡単に利用できる実用的な車両運動シミュレーション

車両運動シミュレーションモデル(理論モデル)の研究は、既に数十年前から行なわれてきましたが、利用者が自ら微分方程式を解くプログラムを書いて計算結果を得る方法がずっと続いていました。その後、ADAMS等の汎用機構解析ソフトや、MATLAB/Simulink等のモデリングツールを使った利用者独自の内製モデルも使われてきましたが、それらは自分のニーズに合ったモデルを自由に構築できるメリットがある反面、使い勝手や計算速度、メンテナンス性等で問題があり、制御設計者や評価担当者の様に車両運動モデルを自分の担当製品の設計・評価の為にすぐに利用したいエンドユーザ向きではありませんでした。
一方、近年自動車の進化の過程で、ABSを初めとする電子制御システムが数多く開発され、それらが益々高度化・複雑化して来ました。これらを効率良く開発するために、コストや時間が掛かる実車テストの代替として使用できる、信頼性が高く、かつ使い勝手のよい実用的な車両運動シミュレーションソフトの出現が待ち望まれていました。
そのようなニーズを満たすべく、米国のミシガン大学出身のベンチャー企業であるMechanical Simulation社が開発・整備してきた、エンドユーザ向けの車両運動シミュレーションパッケージソフトがCarSimです。
CarSimのグラフィックデータベース入力画面
CarSim単体でのレーンチェンジ走行試験のシミュレーション結果表示例
CarSim単体での凹凸の設定された三次元道路コース走行のシミュレーション例

MATLAB/Simulinkの制御モデルと結合したシミュレーション

CarSimは、MATLAB/Simulink上で動作する「S-Function」車両モデルとの入出力インタフェースを標準装備しています。ブレーキ系、操舵系、パワートレーン系やその制御システムなどは、CarSimの外部でユーザーが作成したSimulinkブロックを、CarSim車両モデルと結合することにより、自由にモデルを置き換えたり制御を入れたりすることが出来ます(図4、図5)。
また、Simulink上で複数のS-Function車両モデルを独立に走らせることが可能で、特性の異なる車両の追従走行と言った、ITS分野での制御研究開発にも利用することが出来ます。

このようにWindowsのPC上でSimulinkモデルと結合して動かすのが、最も一般的なCarSimの利用方法です。
Simlink上でのABS制御ブロックとCarSimを接続した例
ABS制御有無比較試験のアニメーション出力例

実機のECUやアクチュエータを使ったHIL-S環境での利用

CarSimはWindowsPC上で実行されますが、そのシミュレーション速度は実際のシステムの動作速度より高速です。例えば、実時間で30秒の車両挙動のシミュレーションを30秒より遥かに短い時間で終わらせることができます(3GHzのPentiumPCで実時間の10倍以上高速)。
これにより、RT-LAB、A&D、CRAMAS、dSPACE、LabVIEW-RTなどのリアルタイムシステム上で、CarSim車両モデルと実機のECUやアクチュエータを実時間で結んだHIL-S(Hardware In the LoopSimulation)環境を構築することができます。現在、ブレーキ系、操舵系、パワートレーン系等の制御システム開発にCarSimのHIL-S利用が増加しています。

マイコンシミュレータと連動したSIL-S環境での利用

HIL-S環境でのECU動作検証は、自動車制御ソフト開発にはメジャーな手法ですが、装置が比較的大がかりで高価であることなど、課題も残されています。そこで、ECUやアクチュエータなどのハードウエアを全てソフトウエアで実現するSIL-S(Software In The Loop Simulation)環境が期待されています。
ガイオの「NO.1システムシミュレータ」もSIL-S環境への応用が可能です。ガイオのマイコンシミュレータ「System-G」は、MATLAB/SimulinkのS-Functionモデルとのインタフェースを持っており、MATLABプラントを仮想ハードウエアとして、ECUのソフト検証を行うことができます。

CarSimを取り込んだSIL-S環境

下図6に示すように、CarSimとの接続に関しては、MATLAB/Simulinkを介して接続(マイコンシミュレータ→MATLAB/Simulink→CarSim)することで、車両挙動をシミュレーションで確認しながら、ECUシステム検証が可能になります。
マイコンシミュレーター+MATLAB/Simulink+CarSimの接続の仕組み

モデルベース開発におけるECU検証環境への期待

現在多くの自動車開発においては、今後の自動車ECU開発の手法として、「モデルベース開発」が取り入れられようとしています。フィードバック制御の要素を多く含む複雑な自動車部品の開発においては、システムをブロック線図モデルで捉える手法が、最も開発効率を高める方法であると考えられています。
このモデリングツールにはMATLAB/Simulinkが事実上のデファクトとなっています。最初の車両仕様定義のフェーズでは、制御ロジックと自動車プラント(被制御ハードウエア)が1つのモデルとして定義されます。
  • 実際のECUソフト開発においては、図7に示すように、この制御ロジック部分をC言語等でコード化し、ECUのマイコンに実装することになります。そこで、この実装コードをマイコンシミュレータ(ISS)で実行し、MATLAB/Simulink上に残る自動車プラントを仮想的な被制御モデルとしてSimulink上で動作させ、これらを連動することで、SIL-S環境でECUソフトのシステム検証を行うことができます。この環境では実機を一切使用しないため、開発ツールに対するコストダウンや、開発の早い段階からのECUシステム検証が可能になるメリットがあります。
  • 車両仕様モデルから制御ロジックを切り出す

自動車V字開発におけるツール適用箇所

これらのHIL-S、SIL-S環境の、自動車V字開発におけるシミュレーション適用箇所について確認してみましょう。図8に示すように、モデルベース開発においては、車両仕様定義・ECU仕様定義のフェーズで、MATLAB/Simulinkによるモデルで仕様定義が行われます。この段階では、CarSimをMATLAB/Simulinkに接続することで、車両挙動をシミュレーションで確認しながら仕様定義が行えます。
次のソフトウエア詳細設計・コード生成のフェーズでは、機能検証のために、マイコンシミュレータ+MATLAB/Simulink+CarSimを連携させたSIL-S環境を利用することができます。ただし、このフェーズでは、システムの全てが完成している訳ではなく、機能の一部をマイコンシミュレータで動作検証するケースが多くなります。また、関数単体に着目したホワイトボックステストも、このフェーズで行われます。
MPUに実装後の検証(Validation)のフェーズでは、前述のSIL-Sや一般的なHIL-Sの環境を使用して、要求仕様であるMATLAB/Simulinkモデルをリファレンスとして、ECUシステムの動作検証が行われます。最終の実車テストの前に、机上でシミュレーションによるシステム動作検証を進められるかが、開発・検証の効率を高めるための要となります。
CarSim連携を適用する場合の自動車V字プロセスへの適用箇所

まとめ

本特集では、車両運動シミュレーションの現状と、ガイオのSIL-Sソリューションをご紹介しました。複雑化する自動車ECUソフトを効率的に開発するための手法として、机上でのシミュレーション技術を利用した、実車テスト前のシステム検証が注目されています。
今後も、ガイオ・テクノロジーは、自動車業界からのご要求に応える開発システムを提案して参ります。

※MATLAB/Simulinkは、米国MathWorks社の登録商標です。

CarSim製品情報

CarSimソフトウエアパッケージの構成

・車両運動モデル(実行プログラムdll:単独実行用とMATLAB/Simulink上での実行用)
・車両諸元/条件入力、データベース管理、計算実行、結果出力の操作画面GUIソフト
・ シミュレーション結果のグラフ表示ソフト、アニメーション表示ソフト

車両モデルと環境モデル

・27自由度4輪フルビークルモデル・1軸及び2軸のトレーラ牽引モデル(オプション)
・ 非線形タイヤ、サスペンション、ステアリング系モデル(マップ)
・ 各種の駆動方式(FF、FR、4WD)、AT/MT、デフを選べるパワートレーン系モデル
・4輪独立のブレーキ系モデル
・オープンループとドライバーモデルでのステア、スピードコントロール・三次元道路コース生成機能(バンク、曲線、アップダウン、µ変化自由)
・空力抵抗や横風の入力を可能にするAerodynamics特性(マップ)
・広範な運転/環境条件、車両パラメータの中途変更可能なイベントドリブン機能等々、クルマの運動性能評価に必要なモデル/機能を完備しています。

基本的な特長

・ 非線形挙動まで解析可能な中規模モデルで、高速で安定したシミュレーションが可能(パソコン上でもほとんどのケースでリアルタイムより早く計算が終了する)
・ GUI入力画面が完備していて、パラメータや解析条件の変更/追加が容易
・ シミュレーション結果をすぐにグラフやアニメーションで確認することが可能
・ 解析事例やサンプルデータが豊富に入っていてすぐにシミュレーション計算が可能
・内製モデルの代替で1人1台ずつの使用を想定した、リーズナブルな価格設定

主な用途

・車両の操縦安定性、制動性能、加速性能の机上検討
・ 車両制御システム開発での制御ロジックの検討/検証
・ 研究開発用ドライビングシミュレータの車両運動モデル
・ 車両運動やその制御理論、ドライバーモデル、ITS分野での研究と教育

利用環境:・Windows PC(Windows2000 / XP)


【CarSimについてのお問い合わせ先】
バーチャルメカニクス永瀬
〒467-0003 名古屋市瑞穂区汐路町3-2-4 伊藤ビル2F
Tel: 052-853-7309
Fax: 052-853-7261
E-mail: sales@virtualmechanics.co.jp
URL: http://www.virtualmechanics.co.jp

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