GAIO CLUB

2022年06月21日

ISTQB GA(General Assembly)meeting のご紹介

技術情報
本記事では、筆者が2022年5月12日、13日にアイルランド ダブリンで開催されたISTQB General Assembly meeting(総会)にJSTQBの代表として出席した際の様子や、雰囲気などをご紹介します。

【ISTQB】とは?

ISTQBとは、International Software Testing Qualifications Boardという本部がベルギーにあるNPOの略です。
その名の通り、国際的にソフトウェアテストに関する資格認定を行っている非営利団体です。ISTQBによる資格認定事業は、130を超える地域で行われており、80万を超える資格認定証が発行されています。(2021年12月現在)

ISTQBが展開されている国や地域(青色の箇所) ※引用元 https://www.istqb.org/

ISTQBが展開する資格には、テスト技術者の中核的な技術となる「CORE」、アジャイル関連の「AGILE」、専門技術に関する「SPECIALIST」の3つの区分があります。これら3つの全ての基本となる用語や知識が「Foundation Level」という資格種別の認定で得られる、というスキームになっています。

ISTQBの資格種別 ※引用元 https://www.istqb.org/


次に、ISTQBがどの様な組織/体制で運営されているかを説明してから、本題のISTQBの総会をご紹介します。

ISTQBの組織体系

ISTQBは、各国の代表組織であるNational Board(NB)がISTQBに加盟するという体制をとっています。NBの他には国際的に試験実施を担うExam Providerという団体が試験問題を作成し、NBと協同またはNBが無い地域においては単独で試験実施を運営しています。
また、ISTQBが展開する資格試験のトレーニングを行うTraining Providerがあります。Exam ProviderとTraining Providerは、基本的にはNB(以下の図にあるMember Boardと同意)により、認定されるという関係にあります。

ISTQBの組織体系 ※引用元 https://www.istqb.org/


日本でのNBに相当する組織がJapan Software Testing Qualifications Board : JSTQBであり、NPO法人ソフトウェアテスト技術振興協会が運営しています。 ISTQBの日本での普及度の目安としては、JSTQBが実施した資格認定試験におけるFoundation Levelの合格者数は、既に2万人を超えています。(2022年6月現在)

ISTQBには、資格認定のベースとなる各資格種別のシラバス(トレーニングを実施するためのベースとなるドキュメント)を作成するWorking Group(WG)や、用語集をまとめるWG、サンプル試験問題を作成するWG、マーケティングを行うWGなどのグループがあります。これらグループには、NBに所属するメンバーやExam Providerのメンバーなどが、ボランティアベースで集まり構成しています。
今回、筆者が出席したGeneral Assembly Meeting(総会)は、年2回NB持ち回りで実施されています。

今回のISTQB総会 開催地について

皆さん、アイルランドのダブリンと聞いて、すぐに何処にあるかをイメージできるでしょうか?
アイスランドと混同される方が偶にいらっしゃいますが、位置的には次の通りでイギリスのお隣の国です。

ダブリンの位置 ※引用元 Google Map


ダブリンはアイルランドの首都で、約54万人が住んでいる都市です。
有名なモノといえば、スタウトビールのGuinnessや、アイリッシュウィスキーを挙げる方がいれば、St.パトリック大聖堂やトリニティーカレッジのライブラリといった観光名所を挙げる方もいるでしょう。

筆者撮影(左からGuinness工場、Stパトリック大聖堂、トリニティーカレッジのライブラリ)

ISTQB 総会の会場

総会は、ダブリンの中心街から歩いて50分程度の場所にある、Clayton Hotel Ballsbridgeというホテルを会場とし、開催されました。丁度、同じ時期に大規模な「Airline Economics Growth Frontiers Dublin 2022」というイベントが当ホテルとお隣のインターコンチネンタルホテルで開催されており、空港への入国者やホテル滞在者の多くが占められていました。

筆者撮影(Clayton Hotel Ballsbridge外観)


総会の前日や前々日は、先に紹介したWorking Groupが実施されました。
筆者もFoundation LevelのWGやExpert & Advanced Level WGの会議に参加しました。

総会の様子

総会は2日間に分かれて開催され、ダブリン現地とWebミーティングを使用したバーチャル形式で併催されました。
初日(5月12日)は「Information Day」と称して、ISTQBのプレジデントからのISTQB全体のステータスアップデートや、会計監査担当による会計報告、各WGのChair(主査)からの活動報告、翌日に投票をかける議案の説明や質疑応答などが行われました。またInformation Dayとしての議事が終わった後に「Round Table」という特に事前に議題を決めなくても良いフリーディスカッションが1時間程度実施されました。

総会での議案については、総会開催の2か月前までにNBから提案され、1か月前に議案としてはFixされるという形式を採っています。2日目が総会の本会となり、投票議案への投票が行われ、最後に次回総会(2022年10月予定)の開催地(モロッコ マラケシュ)の案内が、ホスト国であるComite Marocain des Tests Logiciels(CMTL)よりなされ、終了するといった流れでした。NBによる投票は、クラウドの投票システムを使ってオンラインで実施することで、リアルタイムでの投票が可能となっています。今回の総会のトピックは、WGのChair(主査)とVice Chair(副主査)の選挙が行われたことや、新しく67番目のNBとしてthe United Arab Emirates Software Testing Qualifications Board (UAESTQB)の加盟が承認されたことです。

資格認定試験全体へのインパクトとしては、コロナ下において暫定的に運用されていたリモートプロクタリング(リモート環境で試験を実施するシステムを運用するスキーム)での試験実施を本運用することが承認されたことです。

日本(JSTQB)では、これまで紙ベースの資格認定試験が実施されていますが、今年度中にCBT(Computer Based Testing)という特定の試験会場でPCを使ってテストをする方式が導入される予定であることが、JSTQBよりアナウンスされています。このため、日本でのISTQB資格認定試験のリモートプロクタリングの導入時期は未定です。

筆者撮影(Clayton Hotel Ballsbridge外観)

UKITB提供(総会後の集合写真)

今回の感想

私自身、2019年10月にインドのバンガロールで開催された総会以来の現地参加となりました。コロナの状況となった2020年よりしばらくは、総会自体がオンライン形式で実施されており、2021年10月にセルビア共和国のベオグラードで久しぶりに総会がオフラインで開催されたときは(オンラインとの併催)、日本からの渡航には大きな制限がありました。
本渡航時のコロナによる影響は、2022年5月段階は、帰国による日本入国前のPCR検査(現地空港を出発する72時間前以内)と、入国時の検疫としての抗原検査、両方での陰性結果が必要でした。(2022年6月より、帰国時の制限はより緩和されました)

個人的には、渡航前のフライトの度重なる変更や、帰国時のイスタンブール空港のトランジットでの航空券の発券トラブルなど、幾つかの想定外のハプニングがありました。

とはいえ、久しぶりにISTQBの仲間に出会い旧交を温めたり、新しい友人が増えたりと有意義に時間を過ごすことが出来ました。
今後も日本、そして世界におけるソフトウェアテストの発展のために、微力ながら活動を続けていきたいと思います。

筆者紹介

大西 建児

ガイオ・テクノロジー株式会社

テスティングエバンジェリスト

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