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2021年08月03日

6/2(水)開催 ガイオプライベートセミナー「xILS市場の現在と将来」マツダ株式会社様 招待講演レポート

技術情報
■イベント名 ガイオ プライベートセミナー
       「xILS市場の現在と将来」
       – 新しい手法として台頭・伸長するハイブリッドxILS –

■開催日   2021年6月2日(水)13:00~17:00

■開催形式  Webによるオンライン開催

■講演時間  16:00~16:50

【講演者】
マツダ株式会社
統合制御システム開発本部 首席研究員
末冨 隆雅様

※本内容の掲載につきましては、当イベントでのご講演者 マツダ株式会社 末冨様に事前に内容のご確認を頂き、ご承諾を頂いております。
ガイオプライベートセミナーにおいて、マツダ株式会社 統合制御システム開発本部 首席研究員の末冨隆雅様よりxILSなどの検証の視点から自動車制御システムのモデルベース開発の現状と将来についてご発表頂きました。本ページでは、その概略をお伝えします。
マツダは、サステイナブル”Zoom-Zoom”宣言2030を公表しており、「走る喜び」の提供、安心・安全なクルマと社会の実現、環境保全の取り組みと「人」「社会」「地球」の 課題解決に向けた取り組みを行っている。また、全てのマツダ車に一貫性を持って価値向上を行う考えで取り組んでいる。

マツダは、SKYACTIV TECHNOLOGYという極めて高い目標かつ極めて大きな仕事量を、極めて少ない開発人員で実現するために、モデルベース開発を導入し、従来開発のブレークスルーとして高い効果を発揮した。
現在、自動車業界では、制御ユニットの増加、「Connected Car」と称される車外との繋がりなどによる機能の増加により、車の開発規模が急増し、開発工数も準じて急増している。また機能の増加に伴い、複雑度が高まっており、品質について全てのパターンを網羅し試験する事はできない状況にある。更に、ECU内部が所謂ブラックボックスとなっているため、車全体での整理統合による適切なコスト管理ができない状況となっている。
自動車制御システム開発におけるモデルベース開発では、実制御対象をプラントモデル、制御アルゴリズムをコントローラモデルで用意し、段階的な検証を行っている。モデル同士で検証を行う「MILS」、コントローラモデルをソフトウェアにし検証を行う「SILS」、プロセッサーのハード及びソフトを含んで検証を行う「PILS」、実際のECUで制御を検証する「HILS」がある。
また、制御のアルゴリズムを試すなど、プロトタイプ開発で実制御対象とコントローラモデルを用いて検証を行う「Rapid-ECU」があり、リアルとバーチャルの組み合わせの検証が可能となっている。

HILSにおけるバリエーションも豊富となっており、制御対象単体でのHILSからエンジンとシャーシを組み合わせたような統合的なHILS、電気系のHILSや実際のバッテリーなどを組み合わせたHILSなどを用意し、検証が可能となっている。
ガソリンエンジンSKYACTIV-Gにモデルベース開発を適用したことで、開発期間、品質の両面で大きな効果があり、下流工程での不具合減少が顕著に見られたが、上流工程での効果は低くく、上流工程の改善が次の課題となっている。

上流工程の改善の取り組みとして「システムズエンジニアリング」「MBSE」と言った、「システムを実現するために全体を統括する技術」を無くてはならないものにしていく取り組みを行っている。
またこの取り組みは「CASE」「ISO 26262」「SOTIF」「サイバーセキュリティ法規」と言ったキーワードに代表される要求が、高度、複雑になってきている状況においても有効だと考えている。また、要件定義やアーキテクチャ設計にエンジニアが集中していけるように、制御モデル作成や検証の部分はなるべく自動化して行いたいと考えている。

システムズアプローチは、車両としてシステム全体を俯瞰し、要求の獲得、要求を分解しアーキテクチャの設計、同一階層内で実現に向けて詳細化する反復、一つ下の階層で繰り返すことで詳細化する再帰的な2種類のアプローチで段階的に詳細化したり、論理的に要求が実現できているかを論証するなど、その思考自体が多岐に渡っている。

また設計情報が膨大であるため、MBSEと称される関連する情報のモデル化やトレーサビリティ管理など、大規模なシステムを多様な視点で捉えるための、一元管理された大きなシステムモデル化にも取り組む必要があると考え、チャレンジしている。

検証領域においては、検証戦略として考える必要があり、抜け漏れなく、できるだけ開発上流での検証で不具合を発見することが効果的である。また、検証を行う時は、前述のMILS/SILS/PILS/HILSに加え、システム設計段階でのMBSEを用いたシステム検証やハードウェア部品も含むシステムHILSも含め、どの要件の検証を行うのか、どのシミュレーションを行い何が検証対象であるかを正しく考え整理しておく必要がある。

【終わりに】(マツダ 末冨様 講演スライド掲載内容より抜粋)
 ・クルマ全体の電子制御システム群の規模や複雑さは、「車外」システム群との連携も加わり、益々加速度的に増加。
  従来のエンジニアリングでは限界がある。
 ・モデルベースで設計を段階的に詳細化しながら段階に応じた検証を効率的に実行する、ツール群の支援が必須となる。
 ・組織を超えてプロセス/ツール間、ドメイン間でモデル(成果物)をつなげるにはツール間の連携が需要となる。
 ・これらにより、エンジニアが高いレベルで継続的に創造を続けることが可能になる。

マツダとしては、これから更に複雑となるシステムを、モデルベースを用いて段階的に詳細化し、適切な検証を行えるツール群の整備を行い、複数のツール間の連携により作業の効率化を図り、システムズエンジニアリングも含む創造活動を行っていきたいと考えている。

筆者紹介

伊藤 真介

ガイオ・テクノロジー株式会社

サービス&ツール事業本部 技術4部 ES4Fグループ グループリーダー

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