GAIO CLUB

2003年11月02日

ユニバーサルデザインを考えませんか?

GAIO CLUB 特集
GAIO CLUB【2003/11月号】
ユニバーサルデザインを考えませんか?
紙の資料による机上の企画会議では分からない「使いやすさ」を実際のハードウエア操作デバイスと仮想プロトモデルで検討

ユニバーサルデザイン!

現在、多くの皆様が、製品開発のキーワードとしているものの1つが「ユニバーサルデザイン」です。

組み込み製品のユーザーには、女性、男性、子供、お年寄りなど、いろいろな人が想定されます。さらには、手の器用な人やそうでない人、力の強い人弱い人、右利きの人左利きの人なども想定できるでしょう。「ユニバーサルデザイン」とは、このような様々な使い手を考慮して、より多くの人が、分かり易く、簡単に、安心して使えるもの作りのことです。

社会は多用化、高齢化が進んでおり、特に、組み込み機器のような電子機器では、その機能はますます複雑になっているため、多くの人に使いやすくすることは難しい課題です。「ユニバーサルデザイン」は、これからのもの作りの大きなテーマとなってゆくでしょう。

ユーザビリティを考慮した製品企画

組み込み製品の操作方法の仕様を考える際、仕様設計者が考えたインタフェースが、果たして使いやすいのかどうかは、その設計者自信が判断できる事ではありません。製品の購入者は様々な人が考えられ、設計者はその1人に過ぎないからです。

ユーザビリティ、すなわち「使いやすさ」とは、あくまで主観的なものであり、設計した操作仕様の使いやすさを判断するには、やはり、出来るだけ多くの被験者によるテストにより、統計的に判断することになります。

実際の組み込み製品開発では

これから開発しようとしている製品を多くの被験者でテストすることが、使いやすさを改善する1つの方法であることは言うまでも無いことですが、実際の製品開発に置いては、何の形もない製品企画段階で最終製品のインタフェースをテストすることなど、できるはずがありません。

実際の多くの開発においては、形だけのモックアップモデルを前に、製品企画担当者や開発関係者など、実際の製品購入者ではない人たちによって、ボタンの配置や形状、ディスプレイの位置、操作方法が決められています。

そうして出来た製品が使いやすいかどうかは、製品をリリースした後の市場評価で判断されることになります。ここで指摘された使いにくさは、次の製品開発で改善するしかありません。あまりに非効率な話しです。

開発前に製品の操作感を体験する

  • そこで、製品を開発する前に製品の操作感を体験する1つの方法が、バーチャルな「プロトタイプモデル」によるものです。製品仕様検討と並行して、PC上に仮想的な製品モデルを作り上げ、実際に操作してみることで、その善し悪しを検討するものです。

    ガイオの「プロトビルダー」は、このような要求に応えたプロトタイピングツールです。

    実際の開発に置いては、製品企画と同時進行でプロトタイプモデルを作成出来なければ、早期にユーザビリティの評価をして、その結果を製品開発に活かすことはできません。出来る限り「早く」実際の製品と同等のイメージや操作感を、バーチャルモデルとして構築できるかが鍵となり、「プロトビルダー」は、このような使い方に、マッチしています。

HMI改善のケーススタディ

例えば、マイコンにより制御される製品の典型的な例として、LCDディスプレイといくつかのプッシュボタンを持つ「炊飯器」を考えてみます。

いまや炊飯器の「予約」機能は当たり前のものでしょう。朝になるとご飯が炊けているというヤツです。基本的な操作は、お米を研いだあと、炊き方を指定、予約時間の設定して、炊飯器を待機状態にする訳ですが、筆者の経験から言うと、この最後操作で予約待機になったのかどうかがわかりにくく、不安な時があります。
  • 次の図は、筆者の炊飯器では、予約状態を示す表示が、モノクロLCDの中にあり、かがんで目を近づけてよく見れば分かるのですが、立ったままだと分かりません。

    特にお年寄りなどの場合、この細かい表示では、朝起きてみるとご飯が炊けていないと言うトラブルも起こるのではないでしょうか?

よく使う機能は分かり易く

「予約」機能は、炊飯器の機能としては最もよく使う機能の1つでしょう。例えば、予約ボタンの上にLEDを付けて、予約待機時にはグリーンに点灯するインタフェースが提案されたとしましょう。

この場合、LEDを追加すると言うことは、製造コストにそのまま影響しますから、付けるかどうかの判断は、実際のユーザーが分かり易いと感じるかをテストしてから決定すべきです。また、この予約待機の表示は、炊飯器を予約する操作の一部ですから、ここだけを取り上げて議論すべきでなく、一連の操作の中で、使いやすいかどうかを判断すべきです。

机上の空想から脱却しよう

企画会議において、紙に書かれた書類だけを資料として机上の検討をした場合では、LEDにフォーカスして操作性を「想像」することしか出来ませんから、さんざん検討したあげく、「やっぱり、付けた方がいいんじゃない?」のような曖昧な結論になりがちです。明らかにプロの仕事ではありません。

「LEDを付けた方が良いのか」を判断する根拠を、プロトタイプモデルを使って一連の操作を体験することで、より確かなものにすることが、「使いやすい」製品作りへの第一歩です。

プロトタイプモデルを作成してみる

  • ここで、「予約」表示がLCDの中にあるものと、予約ボタンの上にLEDで表示されるものの2通りのプロトモデルを作成します。研いだお米をセットした後からの一連の操作を、両方のプロトモデルに同じように設定し、操作の流れを体験してみます。一連の操作感、「予約」機能の操作性、問題とした「予約待機」のわかりやすさなどについて、より総合的に判断が出来るのではないでしょうか?

PC上のプロトモデルでは体験できないこと

PC上のプロトタイプモデルは、マウスで画面上のボタンをクリックすることで操作するため、ボタンとのインタフェース(感触や押し易さ)については体験できません。実際の製品がプッシュボタンであれば、マウスのボタンと同等のものと考えることも可能です。 しかしながら、最近よく使われるロータリーエンコーダのようなノブを回す操作については、PC上にどんなに器用に実装してみたところで、実際の操作性とは大きく異なってしまいます。

このようなデバイスについては、実際のものでなければ操作性の評価は難しいでしょう。ならば、試作するのが難しいLCDの様なデバイスはPC上の仮想的なモデルを使用し、操作性に関わるデバイスには実際のものを使って検討することで解決できます。

ハードウエアデバイスをプロトビルダーにつなぐ

プロトタイプモデル作成ツール「プロトビルダー」には、シリアルやUSB経由で、外部ハードウエアデバイスを接続するインタフェースを持ちます。PCのディスプレイにかぶせる形で、ロータリーエンコーダなどを実装した基板を取り付け、これを操作することで、PC上の仮想LCDの表示が変化する様な仕組みを実現できます。

かなり凝ってはいますが、製品のハード/ソフトの仕様決定を失敗しないためには、安い投資ではないでしょうか?

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